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「トランプ関税ショック」の二の舞を回避せよ 資産運用、急落リスクから身を守る3つの策

2025.5.26

あなたは4月の世界的な株価急落(いわゆるトランプ関税ショック)をどう受け止めただろうか。積立投資で少しずつ増やしてきた含み益がみるみる減っていくのを目の当たりにして辛かった、という人は多いだろう。中には含み益が瞬く間に損失に転じて、茫然となった人もいるかもしれない。4月の急落で精神的に大きなダメージを受けてしまったというなら、この機会に資産運用の内容を再点検することを勧めたい。運用の中身が自身の「損失許容度」を超えている場合、我慢せずに運用リスクを抑えるのも選択肢の一つだ。株式相場は依然として波乱含み。急落のショックからわが身を守る3つのリスク抑制策を紹介する。

 

まず「耐えられない損失額」をイメージ

運用を始めるとき、あるいは運用のあり方を見直すとき、まず考えてほしいのは損失許容度だ。これは、運用をしていてギリギリいくらの損失までなら我慢できるかの水準で、例えば運用資金が100万円で、30万円の含み損までは何とか耐えられるというなら許容度は30万円となる。

率にすると30%の損失だが、同じ30%でも運用資産が1000万円なら損失額は300万円になる。1000万円を元手に運用している人が「大事な老後の備えが300万円も減るのは絶対にイヤだ。一時的な含み損だとしても100万円が限界」というなら、損失許容度は100万円(率では10%)となる。

損失許容度は個々人の性格・志向や投資経験などによって千差万別だ。よく使われる「リスク許容度」と同じような考え方だが、運用に伴う損失を具体的な金額として捉えるのがミソで、損失を生々しくイメージできて痛みが実感しやすくなる。

 

運用を難行苦行にしないために

4月の関税ショックでは、米国株の代表的指数であるS&P500が2月の年初来高値から4月8日の安値まで1カ月半で19%下落。世界株指数のMSCIオールカントリーの下落率は14%、日本の代表的指数である日経平均株価は同期間に21%と最もきつい下げだった。

この急落でもしも一時的にせよ含み損が損失許容度を超えてしまったなら、運用のあり方を再考してもよいのではないか。理由は簡単で、資産運用が難行苦行になり、日々の生活の足かせになってはいけないと考えるからだ。そこで、損失許容度に合わせて運用のリスクを抑える3つの方法を紹介しよう。

ひとつ目はよく言われるような資産配分比率の見直しで、運用資産に占める株式の比率を下げるという方法だ。様々な資産の中で株式は長期にわたり最も大きな利益をもたらしてきた頼りになる資産だが、その分、価格変動も大きくて損失をもたらす恐れも最も強い。その株式への投資を減らせば、4月の「関税ショック」のような相場急落時に被るダメージを小さくできる。

ただし、リターンはリスクを負った者へのご褒美なので、リスクの高い株式の比率を下げれば期待できる見返りも小さくなる点は承知してほしい。

 

株式の比率変更で運用はどう変わるか

では、株式組み入れ比率を引き下げると運用にどんな影響が出るのか、具体的な投資信託を例に見てみよう。対象とするのは日興アセットマネジメントが運用する「年金積立グローバル・ラップ・バランス」というバランス型投信のシリーズもの。「積極」から「安定」まで資産構成が異なる5つのタイプがあり、5本とも設定から23年が経つ古参ファンドで、堅実な運用成績を上げてきた。

株式の組み入れ比率は最も高い「積極」が81%で最低の「安定」が32%。タイプ別のリターンとリスク(基準価額のブレ幅の大きさを示す数値)を見ると、株式の比率が上がるのにほぼ比例してリターン、リスクとも上昇しているのがわかる(表)。

タイプ 株式組み入れ比率(%) 年率リターン(%) 年率リスク(%) 想定最大下落率(%)
5年 10年 20年 5年 10年 20年
積極 81 14.6 8.4 6.9 12.6 13.3 15.0 -23.1
積極成長 67 11.7 7.0 6.0 10.6 10.9 12.4 -18.7
成長 50 8.1 5.3 4.9 8.1 8.2 9.2 -13.5
安定成長 40 6.1 4.2 4.1 6.8 6.6 7.4 -10.7
安定 32 4.1 3.2 3.4 5.5 5.2 5.8 -8.3

注)「想定下落率」は相場急変時に約95%の確率でこの数値以内に収まると想定される年間最大下落率。(過去20年の年率リターン)ー(過去20年の年率リスク×2)で算出

ついでに相場が大変動したときに想定される年間の最大下落率を推計してみると、当然ではあるが、やはり株式の比率が高いほど想定下落率は大きくなった。この投信のケースではあるが、株式の組み入れ比率が半分に下がれば、市場で何らかのショックが生じたときに資産が受けるダメージも半減する。

 

運用額の縮小やファンド入れ替えも

リスク抑制の2つめの方策は、運用する資金の額を減らすという身を縮める戦術だ。運用している資産の組み合わせを円グラフで表したとすると、最初の方法のように資産の構成比を変えるのではなく、円の大きさをキュッと縮めるようなイメージだ。

500万円を運用していて30%の損失が発生すると損失額は150万円だが、運用額が300万円なら損失率が同じ30%でも損失額は90万円と小さくなる。ただし、運用に回す元手が小さくなるのだから、やはり相場の上昇時に得られるリターンも少なくなる。

3つ目は少しマニアックかもしれないが、同じ資産の中で投資対象とする投資信託(ファンド)を低リスクものに入れ替えるという方法だ。

少額投資非課税制度(NISA)の利用者などを中心に、外国株ならS&P500やMSCIオールカントリー、日本株なら日経平均や東証株価指数(TOPIX)といった株価指数に値動きが連動する投信を買う人が増えている。インデックス投資は市場平均並みのリターンが期待できる投資法だが、忘れてならないのはリスクの方も市場平均並みの水準を負っている点だ。このため、リスク許容度の低い人などが知らず知らずに過度のリスクを取っているケースもある。

 

運用効率の高いアクティブ型投信を使う

そういう場合は、株式で運用する投信の中から相対的にリスクが低いファンドを選び直すという対処法が考えられる。新たに選ぶ投信はリスクを抑えた運用をしているので、期待できるリターンも下がってしまうのは仕方がない。ただし、ただリスクが低いだけで運用が下手などというファンドは絶対に買ってはならない。

そういうときにはリスク相応の成績を上げている、運用効率のよいファンドを選びたい。低リスクで、かつ、「シャープレシオ」という運用効率を測る指標がインデックス型投信よりも高いか、遜色のないファンドが候補になる。

先進国株投信なら「MSグローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」「グローバル・バリュー・オープン」など、日本株投信なら「三井住友・配当フォーカスオープン」「ニュー配当利回り株オープン」といったところが具体例だ。

ついでに言うと、候補に挙げたのはいずれも運用担当者が運用の裁量を任されているアクティブ型投信だ。アクティブ型というと、当たり前のように「インデックスを上回る運用成果を目指す」といった枕詞(まくらことば)が使われるが、それは一面的な見方。インデックスを上回るリターンよりも、リスクを抑えた効率的な運用を目指すアクティブ型ファンドも存在することを知っていてほしい。

 

無理は禁物、しかし、できれば楽観的であれ

運用のリスクを抑える3つの方法を紹介したが、個人的には、相場の大変動でダメージを受けたときには気持ちの切り替えが大事だと考えている。過去の事例では、世界の株式相場は大暴落が起きても大半の場合は5、6年で元の水準を回復している。長期の運用であることが前提だが、慌てて売るよりも耐えて持ち続けた方が長い目で見ると大きな成果を得られた。

損失許容度も一定ではなく、運用経験の積み重ねやライフステージで変化する。多くの人の場合、許容できる損失額は経験とともに増えていくだろう。数年後には、今回のようなショックが再び起きても受け止め方は違っている可能性が高い。

個人の資産運用に無理は禁物ではあるが、「相場は下げてもいずれは戻る」と楽観的に取り組めるなら、それに越したことはない。

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