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今から買えるか、史上最高値圏の金(ゴールド) 短期の調整必至(?)でも侮れない分散効果

2025.6.21

金(ゴールド)はいざというときに頼りになる資産だ。足元でも中東情勢の緊迫で世界の株式市場に警戒感が強まったとき、ニューヨーク金先物相場は逆行高して史上最高値をうかがう水準に上昇した。分散投資の一環として金価格連動の投資信託などをポートフォリオ(資産の構成)に組み入れていると、世界経済の混乱や金融不安、戦争などが起きたときに市場の動揺を吸収し、資産全体の価値をある程度は守ってくれる効果が期待できる。理屈はその通り。問題なのは、ここまで短期間に価格が急上昇してしまった金を今からこの水準で買っていいのかどうかだ。

 

分散投資、金と株式とは相性がよい

NY金先物の価格は、今回の急騰相場の起点となった2022年10月から25年5月までの2年8カ月で2倍になった。金相場としては異例ともいえる急ピッチの上昇で、棒立ちのようなチャートを見ると高所恐怖症に陥ってしまう人もいるのではないか。急上昇の反動で短期的にはいつ調整局面がやってきてもおかしくない、という見方がある。

では、ここから先の金投資には慎重な姿勢で臨むべきなのか。先走って結論を言えば、金を全く保有していないなら、今からでも金融資産の10~15%をメドに金価格連動投信などを組み入れた方がよい、というのが個人的な見解だ。ただし過去3年ほどのような大きなリターンを得るためではなく、分散投資の一環として買うのがメーンの目的になる。

何より、金の分散効果は侮れない。分散効果とは、複数の資産を組み合わせて保有したとき、一つの資産が値下がりしてもそれ以外の資産が上昇すれば資産全体が受けるダメージは限られる、という考え方。できるだけ値動きの連動性(相関)がない資産を組み合わせるのが前提になる。

様々な資産のうち、長い目で見て最も大きなリターンをもたらしてくれるのは株式だが、金はその株式との相性がいい。例えば直近では、4月のトランプ関税ショック、6月に起きたイスラエルのイラン攻撃のとき、株式が売られる一方で「安全資産への避難」という理屈で金が買われた。

 

リーマン危機時はマイナス相関に

過去を振り返っても、2000年代初めのITバブル崩壊や2008年のリーマン危機のような資産市場全体を大激震が見舞ったときにも金は強かった。当初は株式、債券の急落に伴う損失を穴埋めする目的などで一緒に売られたが、金相場はいち早く底入れし、行き場を失った投資マネーの受け皿となった。

ニューヨーク金先物価格と米国株指数であるS&P500の相関係数(値動きの連動性を示し数値が小さいほど異なる動きをする)を調べてみると、ITバブル崩壊前後の2000年1月~03年1月、リーマン危機を含む07年1月~09年1月の両期間とも数値はマイナス(反対の値動きを示す)だった。ちなみに25年5月までの1年間の相関係数は0.2。さすがにマイナスではなかったが、分散効果を発揮するには十分な水準だったといえる。

市場の波乱で株式や債券で運用する投信がみるみる含み益を減らしていくとき、一つでも逆行高してくれる資産があるのはありがたい。金に求めたいのは、いざというときに資産価値の面、心理的な面で支えとなってくれる、そんな役割だ。

 

米ドルの信認低下、世界の中央銀行の購入続く

では、金には今さら大きなリターンは望めないのかというと、それほど悲観的になる必要も感じない。確かに上げピッチの速さの反動はあるかもしれないが、長い時間軸で考えると、1980年代から90年代のような長期の停滞相場がやってくる恐れはなさそうな気がしている。背景にあるのは、金市場の構造的な変化だ。

金は様々な顔を持つ資産だが、市場が主に関心を持つのは「安全資産」としての金と、「通貨の代替物」としての金である。このうち、通貨代替としての位置づけが重みを増している。理由は基軸通貨として為替市場に君臨してきた米ドルの信認低下だ。

米国の国家財政は第二次世界大戦時以来といわれる大幅な赤字。追い打ちをかけるように、トランプ政権はドル取引の動機付けを失わせるような関税政策に固執している。中国などの新興国だけでなく、欧州各国なども外貨準備に占める金の比率を高めている。今では金の主要な買い手はインドや中国の宝飾品需要ではなく、各国の中央銀行だ。その中央銀行によるドル離れ・金買いの流れはしばらく続く可能性がある。

覇権主義・冒険主義的な国々の台頭や先進国の政治・経済的な地位低下などを背景に、いわゆる地政学リスクも年々増大しているような気がする。安全資産としての金の方も、折に触れて資産市場の前面に押し出される場面がありそうだ。

 

連動投信、ヘッジの「なし」「あり」どちらが有利?

最後に、金価格連動の投信を買うときに為替ヘッジのあるファンドと、ないファンドのどちらを選ぶかを考えてみたい。

「ヘッジなし」の多くはドル建て金価格を円に換算した円建て価格で取引する。金自体の価格変動リスクに加え、ドル円相場の変動リスクも負う。円安ドル高(例えば1㌦=140円から150円)になると円換算した価格が膨らむため、「ヘッジなし」を保有している投資家には利益(為替差益)がもたらされる。円高ドル安(例えば1㌦=140円が130円)になればその逆で、損失(為替差損)を被る。

一方、「ヘッジあり」は為替の変動リスクから資産を守るため、あらかじめ為替の先物予約を使って将来の取引レートを確定しておく。円安になろうが円高になろうが差益も差損も出ず、取引するファンドの値段(基準価額)はドル建て金価格の動きをほぼなぞったようになる。ただし為替のヘッジは費用(日米の短期金利の差で、今なら年4%強)がかかり、その分、ファンドのリターンは目減りする。

実際の投信でヘッジのある、なしがどんな違いを生むか、運用成績を比べてみよう。対象はSMTゴールドインデックス・オープンの「ヘッジなし」と「ヘッジあり」の2本だ。

過去5年のリターン(年率)は「ヘッジなし」が20.0%で「ヘッジあり」が8.9%だった。大きな開きが生じた理由は過去5年、ドル円相場がほぼドル高円安基調だったため。「ヘッジなし」には金価格の上昇分に為替差益も上乗せされた。一方、「ヘッジあり」は為替差益がないうえ、日米の短期金利差が大きくヘッジコストが重い負担になった。

次に過去1年のリターンをみると、「ヘッジなし」が29.2%に対して「ヘッジあり」が33.5%だった。この1年はどちらかといえばドル円相場が円高方向に振れたためだ。

要は、どちらが有利になるかは為替相場次第。円安を予想するなら「ヘッジなし」、円高を見込むなら「ヘッジあり」を買えばいいのだが、為替の予想はそれはそれで難易度が高い。リスク回避の志向が強い人なら、とりあえず「ヘッジあり」を選んでおくのが無難だろう。

蛇足ながら、個人的には金価格連動投信に限っては「ヘッジあり」を推してきた。過去にはドルが売られるとき(ドル安円高のとき)、ドルの代替として金が買われることが多かったからだ。せっかく金価格が上昇しても円高で相殺されてしまうのはもったいない。さらに、円高時には外国株投信(ヘッジなし)などの基準価額にも下げ圧力がかかるので、金の分散効果を生かすためにも「ヘッジあり」が有効だと考えてきた。

もっとも、近年の相場では「ドルが売られるときに金が買われる」というパターンが当てはまらない局面も目立つ。悩ましいところではあるが、ドル円相場の先行きはわからないので、当面は「ヘッジあり」を継続する方針だ。

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