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頼れる「お金の相談相手」はどこにいる? フィナンシャルアドバイザー(FA)・フィナンシャルプランナー(FP)に求められる3つの条件とは

2025.5.14

どうやってお金を増やしたらいいのか、どうしたら持っている資産を守ることができるのか――。あなたの周りには、そんなお金の心配事を気兼ねなく相談できる相手がいるだろうか。お金の問題はプライバシーに直結するし、たとえ一部だとしても、個人のフトコロ事情を見知らぬ相手に明かすのは心理的なハードルも高い。世の中にはファイナンシャル・アドバイザー(FA)とかファイナンシャル・プランナー(FP)とか、あまたのお金に関するプロのアドバイザーが存在する。では、どうしたらその中から信頼できる相談相手を探し出せるのだろうか。お金に関する「頼れる相談相手」の条件を考えてみた。

 

売るのが仕事の販売会社、顧客利益は後回し

個人的には、資産運用などのアドバイザーが一般の人々から信頼を得るためには、3つの前提条件を満たす必要があると考えている。

第一に、相談者の利益を常に最優先できること。

第二に、アドバイザーが既存の金融機関から経済的に完全に独立していること。

第三に、当たり前ではあるが、資産運用などについて相応の知識と経験を持っていることである。順を追って説明していこう。

まず利益の優先順位について。日本で運用や投資のアドバイザー役を長く務めてきたのは、銀行や証券会社など金融商品の販売業者だ。しかし販売業者の仕事は商品をできるだけたくさん売って利益を最大化することにほかならない。多くの金融機関では、ノルマを課せられた営業現場がノルマ達成のために、顧客の適性を度外視して手数料の高い商品を売ったり、頻繁な売買を促して手数料を稼ごうとしたりしてきた。顧客の利益は後回しで、これでは普通の人々は安心して投資や運用のアドバイスを求めることはできない。

 

金融庁の「顧客本位の業務運営」は何を変えたか

もちろん、過去にも顧客利益を大切にしてきた金融機関の現場もたくさんあっただろう。さらに少額投資非課税制度(NISA)が始まった2010年代からは、金融庁が金融機関に「顧客本位の業務運営」を強く求め、営業姿勢の転換を促してきた。今では営業員の評価項目から金融商品の販売額を外し、顧客資産の増加額や満足度を中心に据える金融機関も増えているようだ。しかし、顧客の利益だけ考えて自社の利益を度外視していては経営が成り立たないのも事実。「顧客本位」といっても、顧客と自社の利益のバランスを調整し、お上から文句を言われない落としどころを探っている金融機関も少なくないだろう。

 

資産格差の拡大促す大手金融機関

話は少し横道にそれるが、金融機関の経営目標が自社の利益の最大化である点は今も変わらない。「顧客本位の業務運営」に従って利幅の大きい商品の大量販売などをやめれば、経営効率は低下する。そこでここ数年、大手金融機関がこぞって力を入れてきたのが富裕層ビジネスだ。富裕層は運用する資産額が大きいし、金融商品だけでなく不動産売買や相続・事業承継などでも手数料を稼ぐチャンスがある。多くの大手証券、大手銀行などが人員などの経営資源を、うまくいけば効率的に稼げるだろうこの分野に集中させつつある。

何のことはない、大手金融機関の経営は金融庁に「エリを正せ」と叱られてから、お金持ちをさらに富裕にして世の中の資産格差を一段と広げるビジネスに血道をあげるようになっている。手間がかかって落とす手数料も小さいマス層といわれるような一般の人々は、ほぼ視界の外だ。頼んだとしても、そうした大手金融機関が頼れる相談相手になってくれるとは思えない。

 

「独立系」を真に受けていいか

話を元に戻すと、条件の二つ目は金融機関からの経済的な独立性だ。言い換えると、そのアドバイザーの生計が誰から収入を得て成り立っているか、ということになる。

FAやFPには「独立系」という枕詞を使う人々がいる。銀行や証券会社、生命保険会社などの金融機関に所属していないことを強調し、自身の中立性を訴求している。だが、組織には属していなくても、特定の金融機関がつくった金融商品を販売し、売り上げに応じた手数料やキックバックを収入源としていたらどうだろう。売り手には利益率が高い商品やキックバックの厚い商品といった、もうけやすい商品を多く売りたいというインセンティブが働くのではないか。

本来、中立の立場で金融商品選びをアドバイスするなら、相談者に適したものを金融機関の垣根を越えて選び、勧めるべきである。そこにアドバイザーの私利が入り込む余地はない。

 

相談者からお金を取らずになぜ成り立つか

金融商品の販売手数料などを主な収入源としている限り、アドバイザーが金融機関の影響を免れるのは難しい。本当に中立の立場でのアドバイスを望むなら、金融機関からはお金を受け取らず、相談者が払うアドバイスの対価を収入源としているアドバイザーを選んだ方がいい。逆に相談者からお金は一切受け取らないというアドバイザーがいたら、なぜそのビジネスが成り立っているかを考えてもらいたい。

残念ながら、顧客から受け取るアドバイス料だけで生計を立てているFAやFPはまだそう多くはない。何せ、日本ではアドバイスは何がしかに付随するタダのサービスという考えが根強く、お金を払ってアドバイスを受けるという慣習が根付いていないからだ。それでも、本当の意味での独立性を担保するために、金融機関には経済的に一切依存しないというアドバイザーも徐々に増えている。

 

アドバイザーの得手不得手と法規制の壁

条件の3番目は知識と経験だ。例えば資産運用のアドバイスを求めるとき、1番目と2番目の条件を満たしているアドバイザーなら誰でもいい、というわけではない。FPなどのアドバイザーにも得手不得手の分野はあるはずで、家計や生命保険の見直しについては適切な指摘をしてくれても、その他の分野では説明が一般論にとどまる、というケースもあるだろう。どんな金融商品を買うべきか参考意見を聞きたいとき、相談者の事情にかかわらず売れ筋のインデックス型投資信託(例えば「オルカン」や「SP500」のような)しか出てこないようでは心許ない。相談者はできるだけ、聞きたい分野を専門とするアドバイザーを選択したい。

ついでだが、資産運用の分野ではアドバイザーに法律面の制約があることも指摘しておきたい。一般のFPなどは相談者に対して、対価を得たうえで投資信託や個別株を具体的な名前を挙げて紹介することができないという点だ。そうした業務には、金融商品取引法で定める「投資助言・代理業」の登録が必要になる。不正な取引や顧客資産の流用などをする悪質業者を排除し、投資家を保護するのが目的だ。投資助言・代理業の登録をするにはコンプライアンスや内部管理の担当者を確保し、さらに500万円の供託金を財務局に支払うよう求められるなど、それなりにハードルが高い。

 

運用アドバイスに必要な一気通貫メニュー

相談者の立場に立つと、アドバイザーに原則的な資産配分の方法などを教えられた後に「では具体的に何を買えばいいか」と聞いて、「それはお話できません」と答えられたらモヤモヤ感が残るに違いない。必要十分な資産運用のアドバイスをするなら、個々人に適したポートフォリオや期待するリターンとリスクに見合った具体的な商品選び、市場環境に即した売買の勧め、相場急落時の対応など、一気通貫のサービスメニューが必要になる。運用のアドバイスを貫徹するために、高いハードルを越えて投資助言業者に転換するアドバイザーがいるのもうなずける。

NISAや個人向け確定拠出年金(iDeCo)が普及するにつれ、資産運用のアドバイスを求める人々のすそ野も広がっているはずだ。しかし現実には、法的な制約もあり、信頼できて役立つ助言ができるアドバイザーは不足しているような気がする。せめてNISAの利用者には、FPなどが積立投資枠の対象商品(金融庁が実質的にお墨付きを与えている)ぐらいは具体名を挙げて推奨してもいいのではないか。

 

「天に唾」とならないように…

さて、長々とお金のアドバイザーのあり方を論じてきたが、実はこの話題は他人事ではない。今は講師専業だが、北澤マネーラボではいずれ資産運用のアドバイザー業務を始めようと準備中だからだ。そうなれば、今度は自身が選別される側に立つ。少しでも多くの人々に資産運用の助言を求められるよう、知識と経験をせっせと磨いておかなければならないと自戒している。

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