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脚光浴びる個人向け国債、高金利に飛びつく前に知るべきこと
2026.9.12
個人向け国債が脚光を浴びている。9月募集の固定型3年、5年、変動型10年はいずれも利率が2%前後に上昇し、販売額が急増しているという。確かに金利を見ると預貯金より有利で、個人向け国債は元本を保証する金融商品の中で「最強」の説もある。だが、表面的な金利だけに目を奪われて飛びつくのは少々危うい。ケースによっては金利が低いはずの預金より手取りの利息が少なくなるなど、投資するうえで注意すべき点もあるからだ。個人向け国債との上手な付き合い方を考えてみよう。
「若者も購入」というけれど…
個人向け国債は預貯金や国内債券の代替として、個人的に長く推してきた商品だ。広く人々に認知されるのは喜ばしいのだが、先日、「ネット証券で若年層の購入が増えている」という新聞記事を見て、思わず心の中で「ありゃりゃ」と叫んでしまった。老婆(爺)心ながら若い人々が商品性をどこまで理解したうえで購入しているか、心許ない気がしたからだ。
個人向け国債には、買うなら知っておかねばならない注意点がいくつかある。
まず、発行から1年経たないと換金できない。つまり、1年経たないと開かない金庫(利息は付く)があって、そこにお金を入れるようなものだ。
買って1年以上が経ったので解約しようとすると、今度は「中途換金調整額」というペナルティーがかかる。どれくらいかというと、直近2回分の利子と同じ金額(ただし本来なら利子にかかる所得税の20.315%分を除いた額)だ。利払いは半年ごとなので、1年分の利子に相当する。
100万円の個人向けを買って発行の1年後に解約した場合、購入後に受け取った2回分の利息は丸々ペナルティーになるので、実質的に手元に戻るのは購入金額と同じ100万円になる。元本は確保できるが利益は出ない。
高金利の恩恵は「資金の固定化」とのバーター
満期まで保有するのに比べると、1年分の利子が差し引かれるのだから中途換金が不利になるのは言うまでもない。
例えば8月発行の「固定3年」は税引き後の利率が1.243086%で、100万円を購入して3年後の満期まで持ち切れば税金分を引いて3万7224円の利子が手に入る。しかし購入から約2年半後に換金すると、手取りの利益は受取利子から税と中途換金調整額を引いた1万9180円となる。
一方、金利1%の預金(半年複利)に2年半預けたときの利息は税引き後で2万121円。わずかだが、同じ2年半という期間に固定3年を保有したときよりも有利になる。
つまり、個人向け国債、特に固定型(3年、5年)は満期まで持ち切ってこそ、高くなった金利の恩恵を最大限に受けられる。そして、その恩恵を得ようとすれば、資金は3年なり5年なり固定化せざるを得ない、という点も覚えておいてほしい。
最後に、いくら個人向け国債の利率が高くなったといっても、せいぜい物価上昇率とトントン程度の水準だということも認識しておきたい。インフレに勝って、資産を大きく増やしていきたいという資産形成層などには向かない金融商品なのは言うまでもない。
中途半端な「3~5年」の運用には最適
こうした商品特性を点検していくと、個人向け国債の活用法が見えてくる。
固定3年・5年:「減らしてはいけない資金」の一時保管所 例えば「3年後に予定される子どもの大学進学のためのお金」のように、3~5年後には使う予定があって、かつ減らすことができないお金の置き場という役割だ。この目的を果たすのに、元本割れの心配がなく、定期預金より有利な運用先である固定3年や固定5年はうってつけの金融商品といえる。
退職金を手にしたが、資産運用をしたことはないという人が、その一部を退避させておくのもいいだろう。3~5年後に本格的な資産運用に取り組むのもよし、資産の取り崩しを始めるのもよしだ。
3~5年という期間は、株式ファンドなどで運用するには短すぎて、預金に放置しておくにはもったいないと感じる中途半端な時間だ。その期間を穴埋めしてくれる金融商品として、個人向け国債は優位性がある。
変動10年=物価上昇に多少は連動する資産防衛の手段 「変動10年」は年2回、長期金利に連動して利率が見直される。その利率は「10年国債の金利×0.66」と上限が決まっているものの、ある程度は物価・長期金利の上昇に追随する。
このため、リスクを負ってまで高いリターンを欲しいとは思わないが、同じ元本保証でも、インフレに負けて資産が実質的に大きく目減りしてしまう預貯金はイヤだという人に向いている。「資産の守り固め」が変動10年のもっぱらの役割だ。
国債の買い手をもっと増やしたい国は、個人向け国債の商品性の見直しに取り組んでいる。少額投資非課税口座(NISA)の対象商品となるのか、相続税の優遇を受けられるようになるのか、結論は今後の議論次第だが、個人向け国債の使い勝手がさらによくなるのは間違いないだろう。
投資家側も商品特性をよく理解したうえで、より上手に使う方法を身に付けていきたい。


