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30年ぶり金利高が迫る、運用戦略の再点検

2026.5.26

新発10年物国債の利回りは5月19日に一時、2.8%と29年ぶりの水準に達した。一時的かもしれないが消費者物価の上昇率を超える水準で、国債など国内債券の投資魅力は少しずつではあるが復活しつつある。原油高がもたらす物価の上昇や一段の財政悪化の懸念などを背景に金利の先高観は強く、家計の資産運用は戦略を再点検すべき時期を迎えている。

バブル期以来の「金利上昇・インフレ」局面

国内の長期金利の過去データを眺めていて改めて驚いた。今回、長期金利は物価高と歩調を合わせるように2022年後半から上げてきたが、こうした持続的な上昇は平成バブルの崩壊を挟んだ1988~90年以来、30数年ぶりのことなのだ。

この30年間、私たちは金利上昇とは無縁の世界で「超低金利とデフレ」、あるいは「低金利とデフレ状態からの脱却」を前提に資産運用を考えてきた。前提はとっくに「金利上昇とインフレ」へと変化しているのだから、資産運用のあり方も見直す必要がある。

見直さなければならない理由は2つある。

まず、ある程度のリターンを金利収入で確保できるなら、敢えて投資でリスクを負う必要はないからだ。現状では、個人が買える国債などの利回りはまだ満足できる水準ではないが、金利が今後も上昇すれば、インカムもの(利息・配当を主な利益の源泉とする金融資産)の投資魅力は増す。

成長株に下押し圧力、不安定さ増す株価

第2に、金利上昇は株式相場の大敵で、金利が上がるほど株価の下落リスクは高まる。教科書的に言えば、金利が上昇すれば理論株価を計算する際の分母となる「割引率」(将来期待される株価を現在の価値に換算するための比率)が上がり、株価に下押しの圧力がかかる。

金利上昇などどこ吹く風で、株式市場がAI・半導体をテーマに空前の盛り上がりを見せているときに説得力はない、と思われるかもしれない。だが、金利高の影響を特に大きく受けるのは、AI関連などの成長株(グロース株)だという点も留意したい。

グロース株は将来の利益成長が最大の魅力で、予想株価収益率(PER=株価÷予想1株当たり利益)は高くなりがち。しかし金利が上昇すると、これまた割引率が上がって期待される利益は目減りし、今の高いPERは説得力を失ってしまう。このため金利上昇はPERの低下を促し、株価は下落しやすくなる。

金利の上昇とともに、株式市場は不安定さを増し、インカムものは投資対象として少しずつ存在感を高めつつある。ここからの運用戦略は、それぞれの人がどの程度のリスクを負うかによって変わってくると考える。

リスク許容度に応じて3つの運用パターン

①株式市場と少し距離を置く リターンの目標が物価上昇率と同程度でよく、敢えて大きなリスクを負う必要がないなら、不安定さを増す株式市場とは少し距離を置いてみてはどうだろう。想定されるのは、運用の最大の目的が資産をインフレから守ることだったり、すでにこれまでの運用成果で資産額が目標に達したりしたケースだ。

そんな人々には、資産配分に占める株式の比率を現状よりも下げ、その分を低リスクの金融商品に置き換えるのが有力な選択肢だ。株式の代替商品の候補は、個人向けの新窓販国債10年(5月発行分の税引き後の表面利率は1.91224%)、同5年(同1.5937)、あるいは元本割れを避けたいなら個人向け国債変動10年(同1.3307395%)などだ。

②インカムもので守り固め 中高年の世代でも資産づくりの途上にあって、ある程度のリスクを負ってでも資産の増加を優先したい場合はどうか。株式の比率を極端に下げる必要はないと思うが、いずれやって来るかもしれない嵐に備え、ポートフォリオの守り固めを検討してほしい。

この場合、組み入れ比率を下げるのは、グロース株の影響を色濃く受ける全世界株式やS&P500、日経平均株価の連動ファンドなどだ。その代わり、相対的に金利上昇への耐性がある割安株(バリュー株)投信や、インカム資産で運用するバランス型投信を組み入れる。

なぜ全世界株式やS&P500が出てくるかと言えば、物価高と財政の悪化懸念で長期金利が上がりそうなのは米国なども同様だからだ。

③将来の種まきで安値拾い 一方、リスクを十分負えるという人なら、金利の上昇期間を将来のための種まきの季節ととらえてはどうだろう。金利高に弱い資産が大きく下げたところを、その都度買っていくという安値拾いの戦略だ。

金利に弱い資産の代表例は金(ゴールド)だ。金そのものは利子や配当を生まないので、金利が上がって債券利回りなどが上昇すると相対的に魅力は低下、マネーが逃げていく。

上場不動産投信(REIT)も同様、金利上昇にはめっぽう弱い。買い手がかりである分配金利回りの妙味が薄れるうえ、借入金金利の上昇による財務の悪化も懸念される。今、国内の不動産賃料は上昇基調なのに、足元でREIT相場がさえないのはそのためだ。

この他、債券も金利が上がっている間は価格が下がり続ける。

無視できない3%接近の長期金利

これらの資産を価格が大きく下がったときにスポットで買うもよし、少しずつ積立投資で買っていくもよし。長期金利がピークを付けたと判断できるまでが仕込み期間で、後は価格が上昇するのをじっくり待つ。

株式市場がAI・半導体のブームで沸き返っているときに、株式の組み入れ比率を下げるだの、インカム資産を増やすだの、臆病が過ぎると思われる向きもあるだろう。

そう言われればその通りかもしれない。それでも、消費者物価の上昇率を超え、3%に接近する長期金利はもはや無視できない、というのが正直な気持ちなのだ。

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